フランスで出産 「無痛分娩」

私が無痛分娩を選択した理由は、

フランスでは自然分娩よりも無痛分娩が主流であること。医療従事者が慣れている無痛分娩のほうが安心。

私が出産したフランスの病院では麻酔科医が常駐しているので24時間いつでも麻酔が可能。また無痛分娩が主流のフランスなので、相当数をこなしている麻酔科医の技術レベルも高いだろうと感じていたこと。

結果、麻酔後の快適さに驚くと同時に、本当に全く痛くないまま出産することに、逆に戸惑ってしまうほどでした。分娩室で麻酔をしてから、出産までの3時間について綴ってみました。 (フランスで出産 「陣痛まで」からの続きです)

***

1:00~1:15
陣痛室にて内診。子宮口は3㎝。正直もっと開いていると思っていたので「まだ3㎝かぁ…」と感じたけど、助産師さんには「よく頑張ったわね!」と言われる。ここの病院は3㎝から麻酔が可能なので麻酔科医を呼んでもらう。

1:15~1:30
分娩室へ移動。病院が用意してくれた服に着替える。ベッドの上に座って待機。すぐに麻酔科医とアシスタントが到着。この時のみ、夫は退室するように言われる。「10分で終わるけど、よかったらカフェでも飲みに行ってて~」と助産師さん。

麻酔科医とアシスタントを残して、助産師さんも退室。

麻酔科医の作業の様子は見えないけれど、背中の消毒や事前準備の段階から安心感のある素早さ。「背中を丸めて」と言われて、すぐにチクっとしたけど、本当に一瞬で何も痛くないままカテーテルが背中に入ってくのを感じ、次に冷たい麻酔が流れていくのが分かった。

出産については不安はなかった私だけど、麻酔に関してのみ、実は少し心配していた。けれど一切迷いのない的確な手さばきで、麻酔科医の腕がいいのか全く痛くはなく何も問題はなかった。(また、事前の皮膚への麻酔や痛み止めはなく、いきなり硬膜外麻酔を施術したように感じた。それでも全然痛くはなかった。麻酔自体の施術時間も5秒くらいだった)

麻酔科医とアシスタントが退室

1:30~2:30
助産師さんが戻ってきて、左腕の点滴用の管に点滴をセッティング。(お昼からずっと左腕に刺さっていた管がやっと使われる!と思った) モニタリングと血圧計にも繋がれて、ここから出産までベッドの上から身動きが出来ない状態が続く。「最初の1時間は仰向けで安静にしててもらうから」と言って、助産師さんが退室。

夫も戻ってきて、20畳ほどある広い分娩室に2人きり。陣痛の痛みがなくなり、「無痛になるなんて信じられない」「今の医学は素晴らしい」「無痛分娩を考えた人すごいよね」とひたすら、麻酔の感動について話す私。(実際に痛みはないけれど、陣痛ははっきり分かるようになっていて、陣痛がきているときはお腹の中から何かが突き上がってくるのを感じる)

麻酔で痛みがなくなってハイテンションのなか、ベッドの上に繋がれている写真を撮ってもらったり、夫とセルフィーしたり、最初の1時間はあっという間に過ぎた。

2:30~3:30
ここから出産に備えて「少し仮眠をとったほうがいいかな?」と思ったけれど、興奮しているので眠れない。

夫はベッド脇の同伴者用のリクライニングチェアで、私がお薦めしたドラマ「mind hunter」を見ていた。私も持ってきたNetflixのドラマを見ようかと思ったけど、「まだまだ先が長いかもしれないから、切り札として残しておいたほうがいいかな?」と考えて、やめておいた。(夫の姉は長男を出産した時、麻酔から出産まで3日間もかかったと聞いていたので)

また、陣痛の波が来ている時のお腹の突っ張りが強くなったらモニタリングのデータ用紙を確認してもらって「山が大きくなっている」「やっぱり!今のは強かった」などと言って、時間が過ぎていった。

3:30~4:00
お腹の張りが真ん中に下がってきたのを感じる。麻酔のボタン追加。その後に下腹部右下にも、やや痛みのある張りを感じる。

助産師さんが来て、点滴を新しいものに変えてくれた。子宮口は4~5㎝。「初産なので1㎝開くのに約1時間かかる、子宮口が10㎝になって2時間待ってから出産する」と説明される。このタイムスケジュールを聞くのは初耳だったので「えー!そうすると朝9時頃?!」とまだまだ時間がかかる事に軽くショック。

「左向きと右向きどちらの体勢がいいか」と聞かれ、「仰向けが楽なんだけど」と答えると、実は「仰向けはあまりよくないので体勢を変える」と言われて、左向きにしてもらう。

助産師さんが退室。

さっきよりもモニタリングの音が静かだなぁと思っていると、しばらくして慌てた勢いで助産師さんがやって来た。体勢を右向きに変えるとのこと。お腹を揺さぶったり、お腹に付けているモニタリングの装置の場所を変えて何度か試してから「実は赤ちゃんの心音が弱くなっている」「場合によっては帝王切開をする」と言われて驚く。(帝王切開は産後に痛くて大変というイメージがあるのでできれば避けたい!と思っていた)

再度、内診をして子宮口は5~6㎝と言われる。「ついさっきは4~5㎝だったのに、もう5~6㎝になったの?」と思う。

4:00~4:30
医療ドラマのワンシーンみたいに、颯爽とした勢いで女医と助手2人が登場する。

経過説明をした助産師さんに変わって、モニタリングのチェックと内診をする医師。「普通分娩でいけるかも。彼女(赤ちゃん)出たがっている」さらに子宮口は9㎝と言われ、「え!さっき5~6㎝と言ってたのに、いきなり9㎝?!そんなことありえるの?」と疑問に思っていると、医師が「出してあげたほうがいい」とつぶやき、すごい気迫で私に「いきんで!」

「へ?今?!」と状況がよくわからないままお腹に力を入れる。

「いい感じ!」と医師。「いい? 準備が出来たら思いっきりいきんで。あなたにかかっているのよ。」と言われ、気がつくといつの間にか分娩室には10人くらいのスタッフがいて、足台をセットしたり、点滴を別のものに変えたり。

点滴を変えてくれたおばちゃんが「陣痛がきたらいきんでね」と言うので「陣痛を感じない」と答えると、「じゃあタイミングを教えてあげるね」と言ってくれた。医師や助産師さん達はみんな若くて綺麗な人が多かったので、このおばちゃんスタッフの人はなんだかほっとする存在で印象に残った。

あっという間に準備ができ、自分のふとももを掴むように言われた後、医師がまたものすごい気迫で「今!いきんで!」痛みが全然ないので想像で腹筋に思いっきり力を入れた。

隣にいたおばちゃんに「もう出かかっているわよ」と言われ「え!もう?」と思いつつ、そしてもう一度「いきんで!」と言われ、さっきと同様に全力でお腹に力を入れたら、生まれました。

***

あまりに急な展開の数々に混乱していたけど、お腹に赤ちゃんを乗せてもらった時にはちょっと泣けた。

へその緒を「パパがカットしてあげて」と医師からハサミを渡されそうになった夫が、(出産前からそういうのが苦手で「絶対やりたくない」と言っていたので、どうするのかと見ていたら)、普通に断っていて笑った。

無痛分娩とわかっていても、出産は辛くて痛いものというイメージだったので、全く痛みを感じず赤ちゃんが生まれてきたことが、不思議な感じがした。

最後の1時間があっという間だったので、余計にそう感じたのかもしれないが、率直にいうと狐につままれたような気持ちだった。突然目の前に赤ちゃんが登場したような感じ。

でもこれから育児をしていくなかで、徐々に実感していくんだろうと思う。無事に出産できて本当によかったです。

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フランスで出産 「産後と痛み止め」へ続きます。

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